華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
母親はいつも穏やかに笑っている優しい人だった。
ふわふわの髪の毛はいつも日をたくさん浴びた花みたいな気持ちのいい匂いがしていて、優しく頭を撫でてくれた。
今見れば、どこか儚げだ。
いまにも消えてしまいそうな、そんな弱弱しさが見え隠れしている。
父親は常に仕事が忙しい人だったが、時間を見つけては家に帰って来ていたし、一日休みをとって遊びに行くことも年に何度かあった。
「結都、今度お休みができたらどこに行きたい?」
「えっとね、公園でサッカーやりたい!」
「おお、サッカーが好きか!」
「うん!大好きだよ!」
わしゃわしゃと頭を撫でられる俺は、キラキラした笑顔だった。
こんな笑顔、できたのか。