華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
場面は、夜になる。
「わたしは、もう長くありません。」
「…ああ、…っ、」
「結都を、どうかお願いします…。」
「悪い、本当に…っ、」
俺は眠っていると思っているんだろう。
本当は、リビングのドアの向こうにいた。
夜中に、喉が乾いて起きたのだが、一緒に眠ったはずの二人が隣にいなくて心細くなったのだ。
リビングに来てみれば、いつも笑顔の父親が泣いていた。
母親はいつも通りの穏やかな笑顔。
ただならぬ雰囲気に、俺は入ることができなかった。