華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
「結婚できなかったこと、本当に……。」
「いいえ。私は、幸せです。結婚なんてしなくても、貴方はいつもそばにいてくれたもの。」
「…悪かった、」
「あやまらないで…。」
この時、やっと俺は知ったのだ。
半年前から入退院を繰り返す母親に何かあると、思ってなかったわけじゃない。
でも、いつも、「大丈夫よ」と言う母親の言葉だけを信じていた。
だけど、大丈夫なんかじゃなかったのだ。
「私が死んだら、あちらのお家に戻ってください。」
「…いや、」
「結都には母親が必要です。」
「しかしな、あの家は、」
「どうであろうと、母親が必要ですよ。まあ、そう簡単には許してはくださらないのでしょうけれど。」
あの女性は気が強そうでしたね、とまた、母親は笑う。
父親には、別の家庭があった。
母親はそれを知っていて、一緒にいたのだ。
それでもいいと、思っていた。
父親も、むこうの家には帰っていない。
ほとんどいつも、家に帰って来ていたから分かる。