華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
それからいくらかも経たないうちに、母親は還らぬ人となった。
最後の言葉は――
「お父さんと仲良くしてね。きっとたくさん辛いことがあると思うけれど、結都は笑っていれば大丈夫。笑顔だけは忘れないでね。」
笑顔はなくしちゃダメよ、と何度も繰り返し、彼女は笑顔を浮かべたまま亡くなった。
父親は静かに涙を流していて、3日ほど意気消沈した姿を見せていた。
「お父さん、」
「結都…。もう、おかあさんは還ってこないんだな…。」
俺よりも父親のほうが辛そうだ。
父親の袖を強く握って、僕がいるよ、と呟いていた。