華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
きっとこれは夢だ。夢に違いない。
こんな景色を見たことはないし、こんな感情を持ったことはなかった。
…少なくとも、覚えている限りでは。
俺の記憶はある日突然始まっていて、思い出そうとすればするほど不思議だ。
始まりというのは叔母の家にたどり着いたところで。
自分の本当の親はどうしたんだとか4歳までは何をしていてどこに住んでいたのだろうとか、そんなことが全く分からない。
だから、こんなのは俺の知らない場所だ。夢だ、夢に違いない。
こんなに暖かくて幸せな気持ちを、俺は感じたことなんかなかったはずなんだ。