華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
そして俺にとっての最大の出会いは突然にやってきた。
兄貴は朝から家にいなくて、きっと一人でふらふらと出かけて行ったんだろうと思う。
基本的には俺の世話をしていてくれるけれど、たまに急にいなくなる。
大抵は昼前に帰ってくるのだけれど、その日の俺はその帰りを待っていられなかった。
仏壇の前に座る両親を横目に、開けっ放しの玄関から抜け出した。
彼らは気付いているのかもしれないが、きっと俺がいなくなったところでたいした問題じゃないんだろうと思う。
「…にいちゃん、」
幼い俺の口からこぼれる言葉は意味を持っていないものばかりで、寂しげなつぶやきは兄を求めるものだ。
そしてたどり着いたのはいつもの公園。
気持ちよく晴れていて、公園にはいつもよりもたくさんの人がいた。
そんな、公園の片隅。
木がたくさんあって、日陰が濃くできているけれど、公園の端だからか人が寄り付かない場所。
そんな木の傍に、白い女の子が、いた。