華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
俺には、幼い頃の記憶がない。
おばさんの家に連れていかれたときのことは覚えているのに、それ以前のことが全く分からない。
俺を家に置いてくれていた、おばさん。
じゃあ俺の母親は?父親は?
………何も、知らない…
「悪い、楓。起こしただろ。」
「うん、だけど…蓮大丈夫?」
「ああ。悪い夢でも見てたみてえだ。」
そうやって無理に笑ってみせた俺を、柚が冷めた目で見ていたなんてしらなかった。