華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
楓side
誰?と俺が思わず零してしまってから、彼女はクスリと笑った。
「…私はあなたたちの知っている栗栖侑希よ。この姿が戻った今、その名前はもう必要ではないけれど。」
頭がこんがらがって、言葉の意味を理解できない。
侑希?侑希だって?
でも、俺の知ってる侑希の姿じゃない。
侑希の髪の毛は茶色で、瞳は赤じゃない。
もっと柔らかな雰囲気だった。
こんな、こんな、刺すような張り詰めた雰囲気じゃない。
「…貴女は、誰ですか、」
「……色々と、分かっているんでしょう。あなたたち相手だと、私はうまく隠し切ることができなかった。あの人も、面白がって情報を与えすぎたわ。」
少し気だるげに、ベッドで身じろぎする。体が重そうだ。
俺には彼女の言葉が理解できなくて、彼女の視線は嘉の方をまっすぐ見ているから、今の話は嘉にしてたんだろうと思う。
「…嘉相手には、変装ごっこをしたわ。お嬢様からのご依頼でね。…貴方の思い女は、貴方には会いたくなかったみたいよ。」
「……っ、やっぱり!あれは!」
「…李玖、昔死んだ貴方の彼女。あの時の墓の掃除も依頼だったの。私は彼女のことなんて何も知らないし、何の感情もわかなかったわ。」
「……。」
李玖はさっきからずっと何も言葉を発しない。
うずくまって部屋の隅で顔もあげない。
少し肩が震えているから、聞こえてはいるんだろうと思う。