華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
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侑希の話が終わり、俺はぶるぶると震える体を抑えられなくなっていた。
あの、侑希が倒れた日。
暁斗さんが言っていた言葉を思い出す。
『大切なものを奪ったのは、この子なのに』
ゴウ、さん…
俺は、その名前を、知っている。
息の仕方がわからなくなって、心臓が痛い。
耳のすぐ後ろに心臓があるみたいに、ばくばくと鳴る心臓の音がこれでもかってほど大きく聞こえた。
「…そういうわけで、楓。」
鈴のような声。
俺はその声も、その話し方も、大好きだった。
「…貴方が私に話した昔話、あったわね。」
心の底から信じられた。
心の底から好きだと思った。
心の底から…この人なら、と思った。
「…貴方の大好きだったエリカを殺したのは、私よ。」
……また、また、また…!
「傷つけて、ごめんね。」
何の感情もこもっていない冷たい声で、彼女はそう言った。
また…うらぎ、られた……
「私の話はこれで終わり。また会うことがあれば、きっとその時は優しくなれないわ。
………さようなら。」
それだけを言い残して、彼女は小さな窓からさらりと飛び去っていった。