華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
それから数時間後。
蓮士と結都は目を覚ました。
「蓮!起きたんだ!」
「嘉…」
蓮士は視線を嘉に向けるものの、焦点が合わず、虚空を見つめていた。
蓮士の頭の中では、意識を失っている間に見ていた映像が反芻されていた。
幸せだった幼少期、大好きだった兄、目の前でその兄に殺された両親。
そして自分の親を殺してまでその兄とともにいようとした、真白な少女…その子が味わっていた絶望。
一人残された、少年。
頭の整理など、付くはずもなかった。
目が覚めた後のこちらの方が、夢の中のようだった。
「蓮…?大丈夫…?」
しばらくたってから、疲れ果てた表情の嘉が尋ねた。
「…わりぃ。結都と話したい。」
振り絞ったその言葉に、嘉は働かない頭で必死に考える。
…彼女は、3人の記憶が混同されたと言っていた。
だとすれば、蓮と結都が話すことはいくらでもあるだろう。
そして自分たちは、それを聞いても何もわからない。
そう思った嘉はコクリとうなずいて部屋の隅にいた李玖を引っ張って部屋から出た。
楓は、ずいぶん前に頭を冷やすと言って出て行っていた。