華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
「マスターの目的っていうのが、お姉さんの真の姿を取り戻すこと。記憶を失った状態では、あの姿を取り戻すことができなかった。だから、昔馴染みの蓮や結都と接触させれば昔の姿を取り戻すと彼は考えたんだ。そしてその計画は、うまくいった。」
本当に良かったよね、あの姿のお姉さん、本当に綺麗だもの。とうっとりしながらユズキは話す。
蓮士も楓も、信じられない話をただ耳に入れることしかできなかった。
きちんと頭に入って、理解できている自信などない。
「お姉さんを揺さぶるために行動したり、だけど邪魔にならないように姿を消したり。本当に大変だったんだよ?僕以外できないことだしさあ…」
テーブルの椅子に座っているユズキは足がつかないのか、ブラブラと足を動かし始めた。
「僕もね、マスター程じゃないけど記憶操作ができるんだ。長く存在しすぎたからかな?MOONに身をおくまでは使えないと思ってたけど、なかなか役に立つよ。」
記憶操作。そんなもの、信じてなどいなかった。だが、自分が記憶を封じ込まれていたことを実感した昨日の今日では、信じることもできる気がする。
「…そんなの、ハッタリだろ。」
蓮士とは違い、楓は受け入れきれないらしい。
忌々しげにユズキを見つめる。
華やあの男の仲間と知れば、憎む対象となり得るのだろう。
「嘘じゃないよう。僕だってねえ、ちゃんと報告とか仕事しなきゃいけなかったから、ずーっと桜華にいることはできなかったの。そのときにちょっといじって、いなくなったりしても怪しまれないようにしたりとか、逆に急に帰ってきても怪しまれないようにしたりとかしなきゃいけないんだから!」
全然気付かないくせに嘘って言うんだから、酷いよね!とユズキはぷんぷんしている。
拗ねた表情が急に子供っぽく見えて、蓮士はまた戸惑った。
楓は、「うぜぇ」と受け入れる気がなさそうだ。