華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
「だいたいさあ、暴走の時とか僕いなかったでしょ?家に残してるって言う風に記憶操作してたけど、よく考えてみてよ。こんな小さな子を家に一人っきりにさせるなんて頭おかしいでしょ。その辺も操作してたの!」
言われてみれば、思い当たる節がいくつかある。
暴走の時もそうだし、現に今日までの数日間だって、城の中にユズキはいなかった。
それを疑問に思うことすら、なかったのだ。
いくら自分のことで精一杯だったとはいえ、幼い子供の面倒を見るにしては自分たちは注意が向かなすぎた。そもそも…
「大体ねえ、経済力も安定もないような不良のあなた達が、こんな子供の面倒見れると思った時点でおかしかったんだよ。みんなして、騙されやすすぎ。」
…ユズキの、言う通りだった。
「自分たちが監視されてたって事実、ちょっとはわかった~?」
頭、ついてこないかもだけどそういうことだから。と、語尾に星でも飛びそうな軽い調子でユズキは言い放った。
「さて、と。話は大体終わりかな?あ、最後に1個だけ言わせてくれる?」
とん、と音もなくユズキは椅子から降りた。そして蓮士たちに背を向ける。
「お姉さんのことを追いかけたり、しないこと。どうせ見つからないけど、次会う時にはきっとお姉さんはあなた達を躊躇なく殺すよ?」
マスターもそうだけどね!と言い残して、ユズキは去った。
するりと窓から抜け出して。
放心状態の蓮士を置いて。
月の出ていない真っ暗な夜に、消えていった。