華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
華の眼前にいる男は、にっこりと笑っていた。華にはオワリが何なのかわからない。
ただ、その笑顔さえあれば何でも構わないと思った。
「…貴方とともに居られるのなら、なんでもするわ。」
「全てがオワレば、僕らはどんなものよりも幸せになれるよ。」
「これ以上…?」
「やっと、僕らの望みが叶う。」
2人きりで長い時間を過ごした2人の、残る望みはただ一つ。それを叶えるために、動き出したのだ。
男がするりと華の頬を撫ぜる。それだけで、華はえも言われぬ感情をおぼえた。
ゾクリと背に走ったそれは、決して恐怖などではない。
「さぁ、始めようか。」
2人は、小さな窓から飛び立った。
城には、飛べない黒の声がチクリと響いた。