華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
2人が最期の地に選んだのは、2人が出会った街だった。
「覚えている。僕はこのベンチに座っていて…」
「…わたしは、貴方を叩いたりしない、と言ったわ。」
「そう……」
2人の周囲には、つい先ほどまで息をしていたものが倒れていた。
今はもう、事切れている。
そんなものには構わず、2人は並んで歩いていた。
「…ここには、お前の屋敷があった。」
今はもう、そこには屋敷などない。
「貴方の家はあっちだったわ、」
周囲の惨状に反して、空は雲一つない晴れ模様だった。
「肌は痛くない?」
「もう直ぐ終わる。そんなことはどうでもいいのよ、」
日に晒されるのは、これで最後だ。全てが終われば華は日光に怯えなくて済む。
2人は歩き続け、小さな一軒家にたどり着いた。そこは、随分前に大きな事件があり今は空き家となっている。
「…そのまま、なの?」
華から、驚いたような声がこぼれた。
「誰にも手をつけさせなかったんだ。」
男は、ふわりと笑って言った。
ここは暁斗が全てを捨てて、全てを得た場所だ。