華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
「月華じゃないか、どうしたんだ!」
「あら、乃亞…。ちょっとした仕事が入ったのよ。」
「そうか。今日はあの方もいないし私も今から仕事なんだ。…気をつけてな。」
「ええ。乃亞も、気をつけて。」
「じゃあ。」
少しだけ話しをしたかと思うと、乃亞は颯爽と薄暗い廊下を歩いて行った。
……あの雰囲気だと、たぶん何かの抹消。
人か、情報か、分からないけれど。
“存在”を“消し”に行くんだろう。
乃亞じゃなくても出来るだろうに。
――例えば、私。
乃亞の特性――私が風を操れるようなこと――は、殺しの世界では意味を持たない。
………私は、使ったことがあるけれど。