華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
私がこういう“身代わり”の仕事をするときは堅苦しい名家のお嬢様のときが多い。
…これは確かに乃亞には難しいかもしれない。
日本で――MOONの本拠地で――活動してるのは女では私と乃亞くらいだから……必然的に私に回ってくるのだろう。
「さて、行こうかの。おぬしは家名を守ることをきちんと考えておくことじゃ。」
ゆっくり、一歩一歩を踏み締めるように前に進み、会場に入る。
「……あやつは、」
「松宮さんじゃありませんか、」
「おお、そちか。」
老人が口を開いた途端に誰かが話し掛けてくる。
何を、言おうとしたのか。
「未也美、」
「……はい。」
話し掛けてきていた大柄の男性を振り切って私に再び声を掛ける。