華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
「簡単だよ。
俺は昔から“家のために生きて、家のために死ね”と教えられてきた。
小学校を卒業したとき、将来と引き換えに中高6年間の自由を貰った。
勉強と、家に迷惑をかけないことが条件だったんだよ。
そして桜華に入って、楽しく過ごした。
…あと1年あったんだけどね。
小さなことがきっかけで父親とぶつかったんだ。
それで、自由の約束は破棄。
今すぐ本家に戻って婚約、結婚。
あと一週間で俺はこの土地を離れるよ。」
誰も口は開かなかった。
「約束、なんてものは親の権力の前では何の意味もないんだ。すくなくとも、俺の場合はね。」
その表情は、とても笑顔とは言い難いものだった。