華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
未也美さんは不自然なくらい饒舌だった。
昨晩見たらしいテレビのことを事細かに話して聞かせたり。
飼ってる犬がどれだけ甘えん坊で可愛いかを話したり。
「それでね、丈太郎が――」
犬の名前が“丈太郎”というところに笑いそうになったけど、特に何も言わずに話しを聞いた。
「お祖父様が拾っていらしたの。最初はひどく怯えていてね…」
話しているうちに、口調が変わっていく。
その口調は、俺が思ったとおり。社交界で出会う女性と同じ。
それも、代々名家のお嬢様のそれだ。
「だけど今はそんなに懐いているの。すごいでしょう?」
「ええ。」
「嘉、携帯が気になるのね。」
パカパカと携帯を触っていればそれは一目瞭然。