華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
電話口で伝えられたそれは、現実味がなかった。
『今度のパーティーの名簿に載ってるの、あなたが。もし本当に嘉が新倉グループの跡取りなら、わたしたち、仲良くしていてはいけないわ…。………わたし、松宮の娘なのよ。』
―――松宮。
先代の社長がその家名を一気に有名にしたことで有名だった。
会社の規模はその一代で倍以上に膨れ上がった、らしい。
そして、とてつもなく運が悪いことに、うちの家と松宮の家はもともと仲が良くない。
『わたし…、もう、嘉には会わないことにするわ…。わたしたちはきっと、出会うべきじゃなかったのよ…。』
松宮と仲が悪いことくらい知っていた。
よく、“松宮に負けないでくれよ。”と父に言われていたし。
―――まさか、未也美さんが。
未也美さんがその松宮の一人娘だったなんて。
『もう、電話もしないでおくわ…。今までありがとう、嘉…。』
ぷつり、と一方的に切れた通話は、二人の関係と同じだった。