元男装少女-アイドルになった双子の妹の物語-
ことりは不安げな視線を木村に向けた。陽は安心させるように妹の頭を撫でる。
「 スカイ の人気が落ちているんだ。」
「何言ってンの?人気が落ちてるわけねーだろ。」南のキツい口調を軽く流して、木村は言葉を続ける。
「確かに、 人気 はあるよ。今じゃスカイの事を知らない者はいない程、知名度も上がった。」
「じゃあなんで、」
「でもね、本当にあがっているのはスカイの知名度じゃないんだ。君達個人の知名度や人気が上がっているんだよ。」
木村の言葉に、全員が息をのんだ。
「ファンが待っているのは、スカイとしての君達じゃない。個人の君達なんだ。君達が所属している事務所の社長からの命令だから、解散は免れる事はできない。」
楓は静かに拳を握りしめた。
「...何時、解散になるの。」
「一か月後のコンサートで、正式に発表する予定だよ。」
「海外デビューはどうなるんだよ!」
「...なかった事にしてほしい。三か月前の「スカイ」だったらできただろうけど、今じゃ無理だよ。」
「スカイ」の人気は知らないところで、スカイのメンバー個人へと分散していっていたらしい。そのせいで個人個人での仕事が増え、最近じゃメンバー同士が顔を合わせることも少なくなっていた。
個人での仕事をするたびに、個人のファンが増える。アイドルグループとしての「スカイ」のファンは減っていっていたのだ。
「...連絡は以上だ。また、何かあったら連絡するよ。今日は久しぶりの全員での仕事で疲れただろう。ゆっくり休んで。」