先生の言うことがきけないの?



「ふうううううううう」


研究室からでるなり、あたしは肺の中の酸素を全部吐き出した。


だからちょっと苦しくなった。


呼吸困難てやつかな。


…多分、違う。


心臓が、すごく、ばくばくしてる。


ひざも笑ってる。


顔が熱い。


あんなに長時間、あたしの顔の目の前に谷内の顔があった。


メガネのずれ具合がやばいくらいかっこよかった。


ほんとは、ずっとドキドキしてた。


けど、それを悟られないようにしてた。


震える声を、必死で抑えた。


目を合わせないようにしてたけど、あたしの瞳はちらちらあの人の顔を見てた。


意識はずっとそっちに向いてた。




違う。


絶対違う。


ちょっとだけかっこいいから。


低音ボイスに心ひかれてしまったから。


男というものに、あまり免疫がないから。


違う。


これは“恋”なんかじゃない。



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