先生の言うことがきけないの?



あたしがあんなこと言っちゃったのには、訳がある。


それは、記憶を2日前にさかのぼる。











「しっつれいしまーす」


もう、谷内に呼び出されたのは何度目だろう。


ここに入るのも慣れてきたし、研究室と間違えることもない。


「おーきたきた。今日は、そこの地図棚からおろしてくれ。30個」


谷内が言ってた通り、本当に毎晩10時半頃電話が来るようになった。


「はぁ?」


「先生の言うことが聞けないのか?」


これはもう、谷内の口癖みたいになってきた。


弱みを握られてるから、仕方がない。


停学なんて、ぜったいに嫌だもん。


それに、仕事を終えたら『よくできました』っていって、頭をなでてくれる。


それがちょっとだけ、嬉しかったりするんだ。


「はいはい、わかりましたよ」


仕方なく、命じられた仕事を始めるために、移動した。








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