先生の言うことがきけないの?


―峯村 花―




だ……れ……?



あたしが開いてしまったのは、電話の発信履歴だった。


そこに並ぶのは、「峯村花」という名前のみ。


「あッちょ、お前かえせよ!!!!」


谷内にケータイをとられる。


「ごめっ…あたし、かえるね」


鞄を乱暴につかみ、社会資料室を飛び出した。



毎晩毎晩、一日だって欠かすことなく電話していたのに。


あの人の発信履歴に、あたしの名前は一つもなかった。


昨日の夜だって電話したのに。


“峯村”という人と最後に電話したのも、昨日の夜だった。


なんだ…彼女いるんじゃん。


あたしのほかにも、毎晩電話してる人いたんじゃん。


じゃぁ…電話なんかしないでよ。


毎日呼び出さないでよ。



下駄箱にむかって走りながら、思う。




目頭が熱いのはなぜだろう。



この、こみあげてくる感情の名前はなんだろう。





もうなんも…わかんないよ…




ばかみたい


期待なんかしちゃって



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