乱華Ⅰ【完】
「…でも帰る」
いつまでも見ず知らずの男の部屋になんていれるか!
掴まれていた手首を振り払えば、簡単に離れた手。
「……外」
スッとベッドから立ち上がり、カーテンを開けて外を見る男。
月の光で照らされたその顔。
陰影を強くつけて浮かび上がった。
う…わっ……
思わず息をのむ。
シャープなラインにスッと通った高い鼻。
セットされたような髪。
長い前髪から覗く切れ長の瞳は射るような漆黒で、その双眸はこちらを窺うかのように向けられていた。
金のメッシュが黒髪によく栄えている。
まさに美形。