乱華Ⅰ【完】
「心ちゃんが“そう”だったとしてもそうさせなければいいんだよ」
わかるだろ?
そんな目をした正宗に誰も何も言い返せない。
まぁ、それはそうなんだが…
颯人を見て、口を噤んだ。
司は地面に視線に落としたまま、何も言わない。
いや、言えない。
修は何事もなかったかの様にバイクにエンジンをかける。
こんな話、颯人の前でするべきじゃねぇ。
それはこの場にいる全員の暗黙の了解なのか、この話はここで終わった。
「陽炎は既に心ちゃんに執着してる。気をつけるに越した事はねぇからな」
「「あぁ」」
「そうですね」
正宗に俺と奏多と碧は頷き、目の前の颯人に目を向けた。
漆黒。
その瞳は今まで一体何を見てきたんだ。
何も感じない様なフリをして、何をその漆黒に映した。
その答えを俺は―
俺達は知ってしまった。
だったら…
もうそんな話、できないだろう?
「碧」
颯人が呼ぶ。
1階のシャッターを開けて、2人は中に姿を消した。
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