乱華Ⅰ【完】
言うんだ。
顔をあげて「何言ってんの?」って。
いつもみたいにバカじゃないのって顔で。
それでいい。
弱みなんて見せない。
言え!
言え!!
言えよ私!!!
「タク…」
あ、ヤバい…
声が震える。
変に思われた?
下唇をぎゅっと噛み、震えそうな口を叱咤する。
崩すな。
私を崩すな。
気の強い佐伯心を崩すな。
「な―…」
何、言ってんの?
その言葉を言うより先に、タクが私の頭を撫でる。
不器用に。ぎこちなく。
「先、降りてるわ」
私が泣きそうだったからか、2度目のそれは、やけに優しく感じてしまった。
「優しくすんな、バカ」
ポツリ呟いた言葉は、シンとした部屋に響いて消えた。