乱華Ⅰ【完】
〜side.心〜
倉庫の扉の前に立って深呼吸をする。
大丈夫。
私は強いんだから。
ハニーブラウンの髪を目に入れながら扉を開けた。
瞬間。
幾つものライトに照らされる。
夜の帳が降りきった今、その光は私には眩しすぎて思わず腕を顔の前に持ってきてしまう。
真下にはまだタクがいて、私を振り返り―…微笑んでいた。
「来いよ」
タクのその言葉に、導かれる様にカツン、カツン―…階段を降りる。
下まで降りきれば、すぐに視界に入った黒集団。
「もういいか?」
「…うん」
颯人に頭を撫でられ、見上げれば手を引かれる。
修も司も蓮も碧も奏多さんも、黒い特攻服に身を包み、厳ついバイクに跨いでいた。
タクも私の横からバイクへと歩み寄り、ドゥルン
エンジンを吹かした。
それを合図の様にだだっ広い倉庫にいた連中も続々とエンジンを吹かし出す。
耳をつんざくような音の中、正宗が私の耳元で「行くよ」声を落とす。
私と颯人と正宗は、黒塗りの車、梶さんの元へと行き、そこに乗り込んだ。