乱華Ⅰ【完】


ヴォン



一際大きく唸りを上げたのは、この黒塗りに横付けされたバイク。



黒とオレンジのツートンカラーのバイク。
―…それに跨るのはタクだ。



颯人は窓を開けて



「行け」



手を高く挙げ、低く響く声を落とした。



それに応える様に次々とバイクが唸りを上げて、乱鬼の倉庫を後にする。



先頭を切って出たのは、傘下の総長3名だった。



奏多さんと蓮と碧。
碧が真ん中で、その両脇を奏多さんと蓮が固めて、走る。



その後に続々と続くのは乱華だとか、乱鬼だとか、龍王だとか、神風とか誰が誰かわからなかった。



ただ圧巻。
ゆらゆらと揺られる光の波を颯人はジッと見ていて、半分くらいが倉庫から出た時



「お前ビビるなよ?」



口端を持ち上げて窓越しにタクが言った。



それと同時に進み出した黒塗り。
左右にはこの車と同時に走り出した修の黒いバイクと、黒とオレンジのツートンカラーのタクのバイク。



併走する距離が結構近くて、窓から手を伸ばせば、手が届きそうだった。



「…司は?」



黒塗りの車から後ろを振り返っても、まだ司はバイクに跨いだまま、乱鬼の倉庫にいる。



まさか、留守番?
なんて考えた所で私の考えを見透かしたかの様に「司はケツ持ちだよ」助手席の正宗が振り返って言った。


< 137 / 294 >

この作品をシェア

pagetop