乱華Ⅰ【完】
「…ケツ持ち?」
なんだ、それは。
正宗の言葉の意味がわからなくて、司を見つめたまま呟く。
後ろを走るバイク集団。
それが数を成し、すぐに司の姿は見えなくなった。
そこで、視線を正宗に戻した。
「…ケツ持ちは、警察に追われた時に他の奴らを逃がす役割の事だよ」
「………」
「司は一番バイク技術に長けているからね」
無言の私を余所に言葉を紡ぐ正宗。
いや、待て。
司の技術云々よりも、聞き捨てならない言葉があったよね?
…警察って言ったよね?
彼は今、警察に追われた時って言いましたよね?
警察=捕まる
そんな数式が私の中に浮かび上がる。
「…え?警察?」
「そう。警察」
「…え?追われるの?」
「こっちは暴走行為してるからね」
当たり前でしょう。
そんな表情の正宗に、その考えに至らなかった私がバカなのか…
頭を抱えるしかない。
「………大丈夫?」
あぁ。私、警察になんて捕まったら終わりだよ。
イロイロと。
彼らの耳に入ったら、どうなるか…
そんな不安が胸を占めだす。
「大丈夫だ」
私の頭を撫でた颯人に頭を抱えたまま視線を移せば、彼は真っ直ぐに前を見据えたまま。