乱華Ⅰ【完】
third
「…はぁ」
口からでるのは、今日何度目になるかわからないため息。
足元に落とした視線を前に向ける。
私の少し前を歩くのは、黒髪をオールバックにした背の高い男。
…何ソレ、若づくり?
心の中で悪態をつく。
真新しい制服に袖を通して、スタスタと廊下を歩く。
濃紺のブレザーに真っ白のシャツ。
赤のチェックのリボンは似合わないから家に置いてきたけど…
真っ赤なチェックのスカートの裾をひらひらさせながら、この広陵高校の小綺麗な廊下を進む。
「ははっため息なんて吐いても仕方ないさぁ〜」
ふいに前を歩く人物がくるりと振り返る。
バチッと合った目を細めてヘラっとした顔をした。
…その笑顔は私をイラつかせる以外の何者でもなくて。
「んな睨むなって〜」
ポンっと頭に手を置かれた事で更には殺意が芽生えた。
やめろ、触るな。
無言でその手を振り払って、じとっとした瞳で観察してみる。
………。
見れば見るほど見えないよ、アンタ。
教師に。