乱華Ⅰ【完】
国道沿いに溢れ返る人、人、人!
え?
今日は一体何のお祭りですか。
それくらい人が歩道に集まっている。
周りのバイクの音で何を言っているかまではわからないけど、確実にこちらに向かって何かを叫んでいる様に見える。
…………何?
「ギャラリーだよ」
「…ギャラリー?」
私に振り返る事なく、正宗が言う。
颯人に視線を向けても頭を撫でるだけで、さっきと同様真っ直ぐ前を見据えたまま。
「傘下全部で走るなんて珍しいからな。いつもよりギャラリーが多いんだよ」
梶さんがルームミラー越しに目を細めたのが、わかった。
…つまりはギャラリーって、この暴走を見に来た人達って事だよね?
……どんだけいるの。
もう一度窓に視線を向ければ―…
タクがクイクイ、指を向けてきていた。
「…正宗?」
窓を開けていいか?
問う前に窓は開かれた。
フルスモークの窓が開いた事により、よりクリアに写る景色。
爆音と言っていい程の音が一体感を出しながら、夜の国道を走り抜ける。
「何!?」
声を出してもバイクの音にかき消されて、自分の声すらも聞こえない。