乱華Ⅰ【完】
タクはこちらに近寄り
「前、見てみろ」
「えっ!?何、聞こえないっ!!」
窓から身を乗り出し再度聞こうとすれば
「顔、出すな」
腕を強く引かれ、一際低い声が聞こえた。
気付けば私は颯人の腕の中で、窓越しのタクが再度口を開く。
まえ、みろ
声は聞こえなかったけれど、確かにそう動いた。
それを見届けたかの様なタイミングで窓は閉まり、爆音がこの閉塞した場所では少し小さくなる。
「心ちゃん危ないよ」
シート越しに振り返った正宗は、颯人の片腕に閉じ込められたら私を見て苦笑い。
危ない?
「危なく、ないよ」
「……危ねぇよ」
颯人は私の頭を小さく小突き、再び前を見据える。
「ごめん…」
それに小さく謝って、私も前と視線を向けた。
黒塗りと併走していたタクと修が前へと走っていき、バラバラに走っていたバイクが2列へと隊列を組む。