乱華Ⅰ【完】


夜の中、浮かび上がるのは赤のテールランプ。



左にハンドルを切り、右にハンドルを切る。
前から順々にその動きをすれば―…



「すごっ…」



視界に写るのは赤、赤、赤。
ゆらゆらと揺れる赤が残像を残し、1本の線になる。



正に光の波。



「アイツらハシャぎすぎだろ〜」



梶さんが言った瞬間、



「ぎゃぁぁあぁっ!」



私の可愛らしさの欠片もない叫び声が、車内に木霊した。



梶さんはあろう事か、いきなりアクセルをベタ踏みし、前のバイクにぶつかるスレスレで止まった。



何やってんのっ!?
頭オカシイんじゃねーのっ!?



気付けば颯人に腕で身体が前に行かない様に、ガードされていて梶さんは何事も無かったかの様に運転を続ける。



「ごめんごめん。アイツらあんまりにも楽しそうだから、俺も混ざりたくなっちゃってよ」



…一人で混ざれ。
あははと笑う梶さんは、決して悪いとは思っていないらしい。彼の首にあるゴツい金のチェーンを締め上げたい。



「梶、死にたいの?」



これには正宗も吃驚したらしく、携帯片手にブラックスマイル。



「そ、それだけは、勘弁して下さい」



正宗の携帯を見た梶さんは、あたふたとしながらへいこらし出した。



…脅されでもしてるの?
明らかに梶さんの方が年上なわけだけれど、そこにはよくわからない師弟関係でもあるのか。


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