乱華Ⅰ【完】
頭を撫でていた颯人の手はそこから滑り落ちる。
その手を掴んで、強く握った。
温かい、手。
温もりのある手とは裏腹に、鋭い視線で前を見据える颯人に、声は掛けれない。
「梶」
「はい」
「行け」
前の人達が散ったのを確認したと、同時に颯人の低い声が落ちた。
「…心ちゃん捕まってなよ」
梶さんが忠告ともとれる言葉を発して、アクセルを踏み込んだ。
エンジンが空ぶかしになる。
タイヤが空回りして、ギュルルルとすごい音を出す。
一気に加速した車のシートに押し付けられる様な形になり、思わず颯人にしがみ着いてしまった。
なりふり構ってられない!
異常なスピードを出した梶さんは、夜の国道をヒュンヒュンと走り抜ける。
次々に変わる景色なんて見る余裕は、ない。
幸いにも車はいなくて安心だけど、ふと見えたメーターは130kmだった。
勘弁してよッ!!!
「あははは!」
なんでか正宗笑ってるしっ!!
スピードでおかしくなったんじゃないのっ!?
こうして、私の恐ろしい初暴走は終わった。