乱華Ⅰ【完】
私の顔を指差し「梶の運転で、すごい顔してた」笑いをかみ殺す。
……………。
私今まで生きてきて、顔を笑われた事なんてないんだよ…
正宗さんは少し失礼なのでは?
殴りたいという感情が沸き上がるのは、致し方ないと思う。
私が今ここで正宗を殴っても、正当防衛に当たるに違いない。
「お前、いーモン着てんじゃねーか」
今、正に正宗を殴ろうと思ったのに、私のふるふると震える拳はタクに掴まれ、それは叶わなかった。
ちくしょう。
いつかお前を殴ってやる!
入り口に着きタクから、正宗の特攻服を取り上げられる。
寒いんだってばッ!!
ギロリ睨んでも彼には通用しない。
それをそのままバサリ正宗に返して「男の特攻服を無闇に着るな」言ってくる。
「…はぁ?」
「…はぁ?じゃねーよ。お前周り見ろよッ!こんだけ人がいたらお前が正宗の女だって噂が広まるぞッ!」
「…別にいんじゃね?」
噂は所詮、噂でしょ?
「お前わかってねーな〜」
私の肩にドッカリ片腕を置いた修は、またタバコを吸っている。
わかってないって何がよ。
別に誰に何を思われようが私には関係ない。
「あーごめんね」
視線を正宗に向ければ苦笑いされた。