乱華Ⅰ【完】
結局それ以上言葉を発する事はなかった。
司が戻って来たから。
ちくしょう。
一体何だったんだ。
どこにこの怒りをぶつければいいのかわからずに、バイクから降りた司に「…おかえり」なんとも素っ気ないものになった。
私のバカ!
こんな“おかえり”を言うつもりはなかったんだよ!
もっとにこやかに言うつもりだったのに、と思いながらも司を見れば
「…おっ…おうっ!」
なんか、動揺してた。
ピンで散らしたミルクティー色の髪を、指で弄りながら目をキョロキョロ。
その姿は、私が“おかえり”なんて言ったから動揺していると、すぐにわかった。
司には素っ気ない云々よりそっちの方が大きいらしいから、良かったけども。
乱鬼の倉庫、幹部部屋。
蓮も碧も奏多さんも乱華幹部も勢揃いの中。
「心」
颯人が私を手招きするから、そのまま歩いて彼の元へと行く。
外ではカラフルヤンキーが祝杯の如く、お酒を煽ってドンチャン騒ぎ。
ここにいてもその喧騒は聞こえてくる。
颯人は長方形の黒い革張りのケースから徐に何かを取り出す。
「後ろ向け」
それをそのまま―…
私の首へと回した。