乱華Ⅰ【完】
私の少し前を軽快な足取りで歩くその男は、どうやら私の担任らしい。
“俺、宮地聡(ミヤチサトシ)35歳独身〜”
さっきされた自己紹介を思い出す。
興味ないよ。
アンタが独身かどうかなんて。
「まぁ〜せいぜい頑張んな」
ニヤリ、その言葉を残して私の担任宮地聡は、一人先に2年G組と掲示してある教室に入って行った。
あんなのが教師なんて世も末だと思う。
しんとした廊下にはもう誰もいなくて、私の姿しかない。
「はー」
少し緊張する胸に手を当てて深呼吸。
…そういえば昨日の人に何も言ってないなぁ。
お礼とか、お礼とか、お礼とか。
少し…少ーしだけね、考えたんだよ。
うん。
ホラ、私迷惑かけたよね?確実に。
なのにお礼も言わないってどーよ?