乱華Ⅰ【完】
「…どうした〜?」
チラリ、タクを見た修はタバコをコンクリートの壁に押し付ける。
その行動が残虐に見えたのは、修の目が冷めているから。
緩い口調ではあるものの、目は一切笑っていなかった。
「…陽炎」
「あ?」
「…えっ?」
陽炎?
今タクは陽炎って言った?
こんな真っ昼間にその名を聞くなんて思ってもみなくて、ただただタクの動向に視線を向ける事しか出来なかった。
「繁華街で暴れてるらしい!俺が行くから、修は心頼んだ!」
タクがオレンジの頭をガシガシと掻いて、屋上を後にしたと同時、今度は修の携帯が鳴りだした。
「………」
「…行くぞ」
私は暫く無言でタクが去って行ったドアを眺めていたが、修の言葉にすぐに我に返った。
いつの間にか電話が終わったらしく、修に言われて、え?どこに?なんて聞く間もなく、教室に連れて行かれた。
「俺は少し用事ができたから、オメーはここにいろよ?コイツ代わりに護衛として付けとくからよ」
閑散とした教室内にいた1人のカラフル頭に、修は私を頼むと走り去ってしまった。
こうも立て続けにタクと修がいなくなるなんて…
タクは陽炎が暴れてるって言ってたけど
大丈夫なのかな…