乱華Ⅰ【完】




トイレを済まし個室のドアを開ければ、まだいたギャル達。



一様にさっきとは違う笑みを携えていて、気分が悪くなった。



こんなに居心地の悪い空間とは早くおさらばしたくて、さっと手を洗う。



そんな私をじーっと見てクスクス。



手を洗い終わりトイレを後にしようとした私は、手をぐっと掴まれた事によりそれを阻止された。



そっと振り返り、その人物を見る。
赤茶の髪が印象的な女。



「……何?」


「何、とか言ってんだけど。ウケる〜」



掴んだ手にギリッと力が込められる。
それと同時に皮膚に爪が食い込んで、思わず顔を顰めてしまった。



振り解きたいのに、思いの外力が強くてそれは適わない。



赤茶髪の女が唇を引き上げカラカラと乾いた笑みを出せば、他の4人も笑い出す。



この空間に私以外の笑い声が響く。



クスクス
ケラケラ



嘲笑うかの様な笑いが、私に向けられている事くらい、いくらバカでもわかるだろう。



その間も掴まれた手にはどんどんと力が込められ、食い込んだ爪が皮膚を突き破り、ジワリ血が滲む。



数分かはたまた数秒か後、異常な程の嘲笑はピタリ止まり私の手を掴む赤茶髪の女は酷く冷めた声で言った。











「…何が“姫”よ。私達はアンタなんか認めない」


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