乱華Ⅰ【完】
…いや、でもね見ず知らずの他人と朝まで仲良く眠るなんて、できないのよ。
いくら私でも。
こっそり夜が明ける前にあそこから抜け出して帰ってきたんだよね。
名前も知らないその人。
いや、綺麗な顔してた、な。
ふと昨日の月明かりの下で見た顔を思い出す。
もしも、次会ったらお礼言おう…
まぁそんな事ないだろうけど…
「佐伯?」
一人で考え込んでいると教室のドアを少し開けた担任が、不思議な顔をして私の事を手招きしていた。
あ、やばい、何考えてんだろう。
両手でほっぺたをパチン、叩いて気合いを入れなおす。
視界に入るのは、太陽の光を浴びていつも以上に輝くハニーブラウンの髪の毛。
それをひと束手で掬い取り見つめる。
………。
その色を目に焼き付け、本当の自分を隠した。