乱華Ⅰ【完】
その場に立ち止まった。
まるで足が地面に縫い付けられたかのように。
梨桜とは一体、誰?
代わりって、誰が何の?
―私が梨桜、の…?―
“梨桜さんの代わり”
その言葉が頭の中でぐるぐると回る。
「あんた、何も知らないの?」
「そんなんでよく“姫”とか言えたわね」
「はっ!マジウケるんだけど」
「梨桜さんがいればアンタなんかが“姫”になる事もなかったのに」
「私たちは―ううん、乱華のメンバーもきっと梨桜さん以外は認めない」
「アンタ消えてよ。目障りなんだから」
私の背中には容赦なく次々と言葉が突き刺さる。
別に聞きたいわけじゃない。
ただ、動けないでいるだけ。
…誰も私の存在を認めない。
『お前は、出てくんな』
『話かけんじゃねぇっつったろ』
『…目障りなんだよ』
血が滲んだ手が痛い。
―…心が、イタイ。
結局私に居場所なんて、ない。