乱華Ⅰ【完】
twelfth
〜side.正宗〜
「正宗!」
昼間の繁華街。
夜と違い疎らな人通りのそこに俺はいた。
俺の名を呼びながら走り寄ってくるタクに、買い物帰りのおばさんが訝しげな視線を向けて―…
そのまま俺に視線を向けたかと思えば、何も見ていないと言った様子でスタスタとその場から去って行った。
俺が怖いのか。
まぁそんな事は今はどうでもいい。
自分の足元に転がる数人の内、意識のある奴1人に絞り、ガツンッ!足蹴にすれば僅かに呻き声が漏れた。
「…これだけか?」
足元に転がる奴らを見渡しタクが問いかけてくる。
「繁華街中いるぞ。今颯人が追ってる」
チッと思わず舌打ちが漏れる。
俺と颯人がここにいるのを知ってたのか、何十人も引き連れて現れた陽炎の奴らは、喧嘩をふっかけてきやがった。
いい度胸だな。
思わず口端が持ち上がる。
「…目的はなんだ」
ギリギリと足に力を入れれば、足元の奴は声にならない声を上げる。
聞こえねぇんだよ。
更に力を込めれば「ガハッ」口から血を吐きながらも俺に挑戦的な視線を向けてきた。