乱華Ⅰ【完】
「ホテル街とかヤベーんじゃねぇの〜?」
いつもの調子に戻った修がバイクのキーをくるくるしながら、ソファーから立ち上がる。
確かに。
日も傾き始めた午後5時。
早く行かねぇと面倒になる。
繁華街の奥にあるホテル街。
今日はもう陽炎の心配はなくなったが、また違った心配が出てくる。
あの心ちゃんの容姿。
白い透き通った肌に、気の強そうな大きな瞳。
やたらと明るいハニーブラウンの髪。
あそこをうろつく男が放っておくはずがないだろう。
「…修は俺と梶の車で行くぞ。司は、裏から行ってくれ」
「…わかった」
コクリと頷いた司は、テーブルに置いたキーを雑に掴みあげて、ドタドタと音を鳴らしながら部屋を後にした。
「しっかしアイツ、なーに考えてホテル街になんかいるんだろーね〜?」
「……わからない。でも心ちゃんは危ういんだよ。多分いつでもスイッチ入るぞ。最初みたいに」
「マジか〜それは早く止めねーとな」
「…あぁ」
修が不意に真面目な顔をする。
コイツもそれなりに心配してるんだろう。
梨桜の話を颯人がするのか…
それともタクがするのか…
それはわかんねぇけど、勘違いだけはするなよ。
バタンッ
倉庫のドアを閉め俺たちもホテル街へと向かった。