乱華Ⅰ【完】
「てかさ、早い話ヤリ目でしょ?さっさと行こうよ」
男の話を途中で遮り、一番近くにあったホテルへと歩を進める。
何故か男は一瞬目を見開き「…あ、あぁ」私の後をゆっくりと歩きだした。
もう何もかもがどうでも良い。
早く私に居場所をちょうだいと、早くこの虚無感を埋めてよ、と頭にある言葉達を振り払う様にホテルのエントランスをくぐった。
「あー…あの、さ。名前なんて言うの?俺、淳平」
部屋を選ぶパネルの前に突っ立った男…もとい淳平は携帯をチラチラと見ながらそんな事を訪ねてきた。
「………別に名前なんかよくない?」
これは虚無感を一瞬埋める為だけの行為に過ぎないんだから。
一緒に朝を迎えてくれれば、それでいい。
「…はっ?」
「…もういいでしょ」
なんでこの男が、びっくりした表情をしているのかがわからない。
ヤリ目なんてだいたいそうでしょう。
適当に点灯するパネルを押し、出てきた鍵を手に取る。
ボケッとした男の横を通り過ぎて、エレベーターのスイッチを押して未だにパネルの前にいる男に振り返った。
「…ヤるのヤらないの?」
「……」
無言のまま私の隣に来た男は、そこでやっと再び私の肩を抱き寄せた。