乱華Ⅰ【完】
確かに梨桜さんの代わりなんて誰にもできないのかもしれない。
もういないと言ったタクの表情からみてもそれはわかる。
弟に当たる颯人なんてよりそうなんじゃないだろうか…
彼らには彼らの思い出があるのだろう。
それは第3者が簡単に首を突っ込んでいい事柄じゃないんだ。
「…この話はこれで終わらせていいか?」
梨桜の話はあんまりしたくねぇんだよと言って、頭をガシガシと掻くタクに何て言葉をかければいいのか。
土足で触れられたくない場所にズカズカと入り込んだのは、私。自分はそれをされたら、許さないというのに。
やっとの思いで小さく「…ん」と告げた私はただの馬鹿な愚か者。
「ま、お前が俺らの側にいるのと、梨桜の事は全く関係ねぇ。ちゃんと自信持てよ。俺達がお前の存在を認めてるんだからよ」
「…あり…がと……」
私の首に掛かるネックレスを弄びながら言うタク。
ぶっきら棒に、だけど優しい言葉に心が綻ぶ。そのままこの話は終わりシンとした静寂が室内を包み込む。
「お前は、何であの場所にいたんだよ」
しばらくして手持ち無沙汰に屈んだタクは探るような目を私に向けていた。