乱華Ⅰ【完】
…なんて言えばいいんだろう。
「私…は……」
言葉が続かない。
本当の事を言ってもいいんだろか。
多分…いや、確実に引かれるのは間違いなし。
言葉を選びに選んで自分の汚い部分は隠すかのようにして告げた。
「…一時の安息を得るため」
ソファーに座った私を下から見つめてくるタクの瞳を見ないように瞼は閉じた。
私、いつからこんなに弱くなったの。
いつからかこんなに、こいつに…こいつらに軽蔑されたくないって思ってたの。
多分最初だったら戸惑いなく告げてただろう。
好きでもない男と肌を重ねるためだと。
だけど私は言葉は選んだものの、意味合いは同じもの。
暗くなった視界のせいか聴覚だけが研ぎ澄まされた様な感覚になって、私とタクの間には互いの息遣いしかない。
タクがずっと無言なのが堪らなくなって
閉じた瞼を恐る恐る開ければ…
「…もう、そんな事させねぇ」
自棄に辛そうな顔をしたタクと視線が交わる。
たったそれだけ。それだけの事なのに。
その時の私には、その言葉が、態度が充分私を救ってくれて
嗚呼、私がタクにこんな顔させてるんだって
私なんかの為にタクが辛そうにしてるって思ったら
「…うん」
もう、あんな事をするのはやめよう…と自然と思っていた。