乱華Ⅰ【完】
「タクは何しにきたのかな?」
ソファーに座ってPCを弄る正宗は顔もあげずに冷ややかに問う。
「あ?休憩だよ休憩」
タクは私の隣でかなり偉そうにソファーに座り、温かいココアを啜っていた。
ココアって!
ココアって!!
にっあわねぇ!!
しれっとしてるだけに笑える。
笑いを抑えるために俯いて肩をプルプル震わせる。
そんな私に気づいたのか
「何笑ってんだよ」
不機嫌な声が隣から降ってきた。
「いや、別に…ブっ」
「てめぇ…」
ごめん笑いが抑えられない!
だって似合わなさすぎるんですけど!!
タクにココア!?
あのオレンジ頭でヤンキーで口の悪いタクがココア!!?
「…だからお前はいつも声に出てんだよ」
「ハッ!また!?」
ココアのカップををテーブルに荒っぽく置いたタクだけど、こめかみに青筋がうかびあがってるんですけど。
そんな怒らなくてもいーじゃん。
本当に似合わないんだから。
やべ、また笑いが…
「……心ちゃん」
カタン、ノートパソコンを閉じた正宗が眼鏡を外して此方を見る。
その目は冷ややかで、だけど口だけは笑みを携えていて…
明らかに怒ってる。
冷ややかに怒ってらっしゃる。
隣のタクはぶぁーかと悪態をついているけど、今の私には関係ない。
「ハイ、ナンデショウカ」
なるべく正宗の視線から逃れる様に宙に視線を彷徨わせながら答えた。