乱華Ⅰ【完】
そんな声にタクはピクリとも反応せずに堂々と繁華街のど真ん中を闊歩する。
少し後ろから追いかけていた私は声がした方をちらりと盗み見た。
「…」
私が見てるのを知ってか知らずか、すごい形相で私の事を睨んでいた。
見るんじゃなかったって軽く後悔。
…あの人たちも私が梨桜さんの代わりだと思ってるんだろうな…
…亡くなった颯人のお姉さんの梨桜さん。
身内が亡くなる辛さ。
それは…
「ぶっ…」
気付けば前を歩くタクは立ち止まっていて余所見してた私はタクの背中に激突した。
鼻が痛い!
「…手」
そのまま振り返ったタクは左手を差し出しぶっきら棒に言葉を紡ぐ。
「…は?」
「だから手!手ぇ出せ!」
意味のわからない私は怪訝な顔をするしかないけど、言われるがままにタクの左手に右手を添えれば何故か周りからギャーっという悲鳴が起きた。
何なんだよ一体。