乱華Ⅰ【完】



タクはそのまま歩き出し暫くすると目的地のお店が見えて、正宗が注文してくれてたのかなんなのか、既に商品は袋詰めにされていた。




それを受け取り再び車に戻ろうとした時、それは起きた。







ドンッ!


「いたっ…」



誰かが後ろからぶつかり、私はそのままバランスを崩してその場によろめく。
タクに支えられてこけたりはしなかったものの、正宗から頼まれたみんなの昼食は派手に地面に転がった。





「おい、心大丈夫か!?」


「…うん」


「…」




無言のタクが見つめるのはぶつかった人が走り去って行く後ろ姿。
やけに難しい顔して眉間には皺が寄っていた。



「…大丈夫だから」


「あ、あぁ…」



地面にぶちまけた買い出しの品を拾いながら、私は手の中のものをさりげなく隠した。





それはたった1枚の紙切れだった。


< 195 / 294 >

この作品をシェア

pagetop