乱華Ⅰ【完】
乱華Ⅰ
first
例えば石ころの中ににキラキラと輝く宝石が1つだけあったとして
その宝石の輝きに気づかない者はいないと思う。
それは逆の場合もまた然り。
つまり今はそういう状態なんだと思う。
辺りは派手なドレスを着たお姉さんと、絹のようなスーツに身を包んだお兄さん。
客引きだかなんだか知らないけどほろ酔い姿のサラリーマンの腕を強引に引く黒服の男。
ここは妖しいネオンが光る繁華街。
あっちもこっちもピンクな看板が立ち並び、下品な明かりがやたらと目にく。
喧騒で耳を塞ぎたくなる
…ハズだった。普段の私ならば。
ふらりふらりと歩く私を怪訝な表情で見る人達。
私が滑稽なの?
それともジロジロ見るほど、私が面白い?
格好が面白いの?
この場所には似つかわしくない格好だから?
チラと自分の格好を確認してみる。
シャツの上からパーカーを羽織り、下は短パン姿。
明らかにこの繁華街では浮いていた。
だけどそんな事どうでもいいの。
だって気分がいいから。
最高に、ね。
自然とゆるゆる持ち上がる口。
何も気にならない。
「ねぇお姉さん」
勢いよく誰かに肩を掴まれて、行く手を阻まれる。